出エデン記

『文明は、ギリシャで始まり、カリフォルニアで終わった。』と言ったのは誰だったか(…アジア、届いてないじゃん)。

先に日本のiTunes Storeで売っておいて、しかし本国USでは一向にリストアップされないThe Eagles「LONG ROAD OUT OF EDEN」。「Long Run」以来、実に28年ぶりのフルスタジオレコーディングアルバム、しかもがつんと2枚組。

ファーストシングル「How Long」は旧知の盟友J.D. Southerのカヴァー。そのコーラスやギタースタイルも、歌詞の内容も、まるで自分たちオリジナルであるかのようにピッタリ。顔と耳の端がますます長く見えるGlennのリードに、コーラスでTimothyの甘い高音が被る。セカンドフレーズがDonに変わって、それが終わると間髪入れずにJoeのギターソロ! スピード感があってゴキゲンかも。カムバックのサインにはいいね。

アルバムには、そんなオールドスタイルロックもあれば、初期のカントリーテイストを彷彿とさせるナンバーもある。音楽的フロントマンGlennの面目躍如ってことで。もちろん、ちゃんとお約束のTimothyのスイートな曲もあるし。ファンキーJoeのギターロックもいいけれど、Ry Cooderインストゥルメンタルがいい、泣かせます(私ならラストに回したぞ)。

しかし、ただの懐古趣味とか「まとめ」になっていないことに、正直、驚かされた。期待を大きく裏切るほど、何だか深くて厚くて。タイトルナンバー「Long Road Out of Eden」なんて10分17秒もの大作。Don好みのディープで影のあるテイスト。デジタルデータだと関係ないけど、2枚目最初に持ってきたのは、とても象徴的。ここを頂点にするために、1枚目があったかのようですらある。

28年という間には、解散があり、ライブがいくつかあり、再結成があり、Farewell Tourがあり。音楽はLPでなく、CDよりオンラインで売られるようになり、ロックバンドは音楽ビジネス企業体になってメンバーが1人去った。911の衝撃と、そこから続く混沌と何度かのレコーディング延期があった。

そして、確かに皺と白髪と体脂肪率が増えたけど、ただ、ろけんろーるスピリットは失っちゃいなかったぜ、と。まだまだやりたいサウンドがある、と。なるほど。

不毛の大地の果てに光るのは昇る朝日か、沈む夕日か。さて、エデンの園を追われた私たちは、どこに向かいますか…。

イーグルス - ロング・ロード・アウト・オブ・エデン

Long Road Out of Eden

Long Road Out of Eden