深夜徘徊

夜。雨。粘り着く重たい空気。
遠いタクシーのうなり声と、サイレンのドップラー音。
小道の向こうの、安っぽいバーのドアが開いて一瞬流れる、下卑た笑い声。


見慣れた場所で偶然に見える、見知らぬ無線LANネットワーク。
詮索するでもなく、必死に無視するでもなく、ただそこに流れている高速の無関心。
「干渉の制御」は「感傷の制御」。


アンテナゲージが、誰かの息づかいのように強弱を繰り返す。
もしそれが寝息なら、せめて明日の朝までは、どうか静かな休息を。