”自分を守る”ということは

映画館で、脂汗をかいて、目を閉じて、耳を塞いで、深呼吸しなければならなかったのはいつ以来だろう。広大な映像と、一時停止できないストーリーに、逃げ場を失う。


Million Dollar Baby
http://www.md-baby.jp/


野球帰りの人と車で混雑するホークスタウンをぐるーーーっと一周して、走ってチケット買って、駆け込んでシートに座った30秒後に本編スタート。最終日だからって、そこまでする必要あったのか? 必要かどうかはともかく、無理する価値があるだけの濃密な時間だった。続けて見ようと思っていた、『宇宙戦争』の最終上映時間のチケットを買っていなくて良かった、『A.I.』をデートムービーにして失敗した時とは異質な絶望感だけど。


Morgan Freemanの視点と語りで進むストーリー展開が良かったな、とても。Hilary Swankって、『インソムニア』の人ね、覚えてないけど。彼女自身は、この映画への出演をどう感じているんだろう。それは、主演女優賞をゲットしていなくても変わらなかっただろうか?


途中までは、ボクシング映画のごくありきたりなカメラワークに、「そういえば、本屋の袋とかに入ってた結婚相談所の案内に『ボクシングを見て興奮する。YES/NO』みたいなバカな質問がよくあったよな...」とか、「ボクシングへの漠然とした憧れは、5月あたりにバイクに乗りたくなったりするのに似てる?」とか、呑気なことを考えていた。でも、この映画のテーマがボクシングではないことが分かってくるあたりからが、とてつもなく苦しくなってきた。涙腺へのボディーブロー。


多分、宣伝のコピーで踊っていたであろう、「愛」とか「感動」とか、そんなチープな単語で語る気にはとてもならない。宇宙チャンバラに自分の歴史や神話を求めながらも、こういった作品がゴールデングローブ2つ取ったり、アカデミー4つ取ってしまうアメリカという国の大きな矛盾。


白髪も薄くなった頭、丸い背中、弛んだ喉の皮膚、深い顔の皺。監督としての、まさに今のClint Eastwoodなればこそのメガホン。なぜ? それは、映画の中で言葉では語られなかった、なぜMaggyがリングに上がるのか?に通じているのか、なんて考えてもみる。


「自分を守れ」、か...

守るべき自分は、リングの内か?外なのか? ベッドの上か?脇なのか?