暴力の共犯性

久しぶりのCronenberg作品を見る。
正直なところ、この作品が特にどうということはない。買ってがっかりではないけれど、素晴らしく衝撃的ということもない。未公開シーンは確かにいかにもなテイストで、それが収録されて監督自身の解説が入っていたりするのは、ちょっとオトクな感じ。


ヒストリー・オブ・バイオレンス
http://www.hov.jp/

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しかし、そこはそれ、鬼才のセンスはあちこちに感じられて安堵。Wendersが心療内科(ペインクリニック併設)で、Lynchが精神科だとするなら、Cronenbergは外科といったところか。しかも麻酔無し、なので安堵とは全く無縁だけど。白髪も皺も増えて、風貌はますます「らしく」なってきた印象。
http://www.festival-cannes.fr/films/fiche_film.php?langue=6002&id_film=4277356
とにかく、この人は一貫して、いびつな人間の激しい暴力を描くことに執拗なまでに拘り続けている。血、武器、アクション、ストーリー、スリル、ホラー、SFX...ともすると表面的で過剰になりそうなそれらの要素を絶妙なバランスで調合し、提示する。人間として存在することそのものの遺伝子レベルの暴力を描き、見る者はそこに嫌悪感を抱きながらもいつの間にか共犯者になっている事実を突きつけられる。
暴力も憎悪も、実は、グロテスクな異形の愛なんだよね。