本当のこと
「あの行為があったからといって、彼の名誉全てが剥奪されてしまいましたか? されなかったでしょう? そう、みんな、分かっていたんです。」
そうかもしれません。でも先生、それは、彼の今まで積み重ねてきた実績故だと思うんですけど...。
もう随分昔の出来事のようだ。W杯ドイツ大会。あの決勝の舞台でジダンが何をやったか。その結果だけははっきりと歴史に残された。
「禁止されている行為をやったんだな?」と聞かれれば、彼は「やりました。」と答えるしかないだろう。
「誰が?」と聞かれれば、「私が。」と。
「どんな風に?」と聞かれれば、「マテラッツィの胸に頭突きを。」と。
証拠や記録があると、説明は理路整然とできる。第三者の視点で。主審は見ていなくても、ジャッジ用のカメラが設置されていなくても、中継映像が捕らえた衝撃的な瞬間は、世界中に同時配信された。そして、禁止された行為をしたとして、主審によって退場を宣告される。それがゲームの中でのルールだから。
でも、証拠が無いことの証明は本当に難しい。読唇術でリップの動きを読むことも可能だったから、当初はいろんな噂が飛び交った。そして、後日、当事者同士が自分の口で語れば、それが一応の説明になった。だけれど、時間が経過した今の本人に、あの時の自分が本当に感じたことをトレースできるだけの読心術はあるのか?
結果に至るプロセス、証拠や記録になりようがないことについて「なぜ?」と聞かれて、「家族を侮辱されたから。」と答えても、「いや、あの瞬間に何を感じたのか、本当は自分でも分からない。」と答えたとしても、結局、それが正しいことを証明することはできない。逆に、そうではなかったことも、証明なんてできない。
見たものを撮影し、聞いたことを録音し、感じたことを記録して、あらゆるものをログに残して、タグを付けて、整理・分類する。そうすれば、事実と真実のギャップをはっきりさせられるような気がするけれど、その時、何をどれぐらい諦めなくてはならないかを決めるのは、じゃあ一体誰なんだ?
軽度発達障害の心理アセスメント―WISC‐IIIの上手な利用と事例
- 作者: 上野一彦,服部美佳子,海津亜希子
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