はなはことしもちりぬるを

暖かさにつられて出てきたことを後悔はしないけれど、嬌声を上げていることに気づかない醜悪な中年女性の集団や、カメラが全てを正当化すると信じているカメラフリークにはいつも疲れてしまう。


ブルドーザーのようなベビーカーの列もどうにかやり過ごし、裁判所の裏手と小学校のグラウンド裏の間の、細い小道をだらだらと下る。
木漏れ日と交差する桜吹雪。


ふと、視線を落とすと、右下に流れる側溝の水面に、散った桜の花びらが溜まっている。
柵で流れの端が遮られて続いている、桜色の長いグラデーション。
花の命は短くて。不要な、無駄な美しさ。
どす黒い水とのコントラストが眼に映える。
大きな鯉が、水中をけだるそうに泳ぐ。


暗いドブ川を、誰も見ない。