Vertigo Tour 2005

やっと来ましたDVD。5月にChicago United Centerで行われた「Vertigo Tour 2005」。当日はBonoの誕生日。2枚目のディスクのドキュメンタリーに、当日までのスタッフやファンの様子が収録されている。こっちを先に見ると雰囲気味わえて最高!


Vertigo//2005: Live From Chicago [DVD] [Import]

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ステージから続く花道は大きなリング状になっている。前回の「Elevation Tour」の時のハートマークが円形に変わった感じ。リングの内側は観客が100人ほど入るだろうか、幸運にもそこへ入れるチケットを手にできるのは、入り口のバーコードリーダーによる抽選結果次第。ライトやスピーカーを支える邪魔な支柱も何もない360度オープンな空間。上の高い位置にスクリーンが4つ正面を向いている。


前座が終わって、20時開演。プラスティックのざるをひっくり返したような青い照明が天井から5個ぶら下がる。客席の照明が落ちて、これがゆっくり上昇すると、歓声も最高潮に。


メンバーがステージ下から登場し、1曲目「City Of Blinding Lights」のイントロが流れ始める。Adamの前にキーボードが置かれているのが新鮮(弾くところの絵はカットされてやんの)。ステージの演出に目を奪われていると、いつの間にかリングの最先端部の下から登場していたBonoにピンスポットが当たった瞬間、ホールに絶叫がこだまする。


ごつい手の中で小さな携帯とデジカメのバックライトが輝く。ライトなのかフラッシュなのか分からないほど。今年は「ONE Campaign」もあったし、この時は「LIVE 8」前でもあって、腕にホワイトバンドが目立つ。


カメラはとにかく贅沢に使われている。ロングで全体をなめる絵から、指先のクローズアップ、真上から俯瞰するアングルと、忙しすぎるカメラワークも気にならない。


天井からテニスボール大の球体を無数に付けた巨大なカーテンが7枚ほど降りてくる。実は、この球体はLEDで、1つ1つが点灯することで、遠くから眺めると巨大な縦長のスクリーンになる(しかも間から向こう側も見透かせる)という衝撃的なヤツ。多分「原子爆弾の解体方法」?という日本語が赤文字の裏返しで似非Matrix風。


フロントマンであるBonoは、サングラスに革ジャケットとどこまでもベタ。イージーにビッグエンディングに持って行かないEdgeのギターが空気を切り裂いて冴えまくる。安っぽいスニーカーの足下が華麗にペダルを操作する。グリーンのベースが似合う、短髪シルバーヘアーのAdamが淡々と重低音でバンドを支える。横をさっと通るときに肩に触れるBonoの手が信頼を示す。ドラムを紙吹雪ごと叩くLarry。結構、歌詞を口ずさんでいる。いつも以上にこめかみの血管が浮き上がって力入ってる。


「Vertigo」はベタに、大Rock'n' Roll大会。黒と赤の帯が渦巻くパターンが浅田飴みたい。「Elevation」の合間で飲む水にむせんで、歌詞が出ないBonoはご愛敬。とにかく汗をかきまくって、この後も何度も着替えては、水のボトルを口にする。「Into The Heart」では、ステージに上げてもらった少年の瞳がキラキラ輝く。Bonoと手をつないで、喝采の中ステージを半周。ああ、こんなことあったら幼い人生が激変してしまうよ。「Miracle Drug」では、ブルーの光の渦の中、ご当地へのリップサーヴィスもたっぷり語る。この時もキーワードは"Future"。


Adamのベースが横隔膜を突き上げる「Love And Peace Or Else」では、リングの最先端までLarryが出てきてドラムを叩く。Edgeの銀ラメギターがこれまた安っぽい。Larryが元のドラムセットに戻っている間にBonoが白いはちまきをはめ、Larryが叩いていたドラムを今度はBonoが叩く。どこの日本の祭りかよ。エンディングはツインドラムになり、そのまま「Sunday Bloody Sunday」のオープニングのドラムロールになだれ込む。


白いはちまきには、イエスの十字架とダビテの星とモハメットの三日月、分かりやすいけどかなりベタ過ぎ。一応、地元のことは褒めておくけど、アメリカ国内で「Bullet The Blue Sky」もやっておかなければならない微妙な矛盾。真っ赤に燃え上がるステージで、サングラスを外し、はちまきをずらして目隠しでマイクまでさまよう演出(見つけられないと、ちゃんとスタッフが誘導する、マジな見えなっぽさ)。


珍しくBonoがハーモニカから入る「Running To Stand Still」が鎮魂歌っぽく聞こえる。New Yorkでは、この曲の代わりが「Miss Sarajevo」だった。「(この曲を一緒に歌った)Luciano Pavarottiはここにはいないけど...俺がいるぜ。」で大絶叫。
スクリーンには、人権に関するフレーズ(国連憲章の条文)が流れ、正面をじっと見据えた少女が淡々と読み上げる。これはJapan Tourではできない演出なんだろうな、そして、このバンドは当分は中国へ行きそうにもないし。


でまた、「Pride」で絶叫モード。緊張と弛緩。希望と絶望。ああ、どの曲でもひゃーひゃー騒いでカラオケ大会やってしまっているメリケンってやっぱりバカだ。会場全体に、握ったLOVEを飛ばしまくるBono。"American Dream...European Dream...Asian Dream...Also, African Dream !"と叫んだ後、「Where The Streets Have No Name」のイントロに被りながら、LEDカーテンのスクリーンにアフリカの国境が流れながら降りてくる。


そして、「One」。人類を月へ送った国の人間に向かって敢えて、地に足をつけた行動を見直そうと説く。語り過ぎだよ、正直過ぎだよ。有言実行だけど、彼らの青臭さは変わらないんだな。こんな事を平和呆けした日本で、英語が通じない日本人に、どうやって伝えるっていうのさ!? "Make History By Making Poverty History."、「ONE Campaign」への参加の感謝をBonoが語る。ホールのライトが全て落ち、観衆の持っている携帯が高く掲げられ、バックライトの小さな無数の光の点が天の川のようにキラキラと輝く。



ここからアンコール。
4つのスクリーンがルーレットになって、Michael Jackson、Saddam Hussein、Uncle Sam(サムおじさん:第二次世界大戦の頃、召集命令を出す実在しないキャラクター)、Bill Clinton、George Bushなどに変わる。ZOO TVキャラが揃って、Bonoの下の子の声で"Mama, Mama, Mama !"と叫ぶと「Zoo Station」のイントロへ。共産国の軍隊で被っていそうなデカい帽子でBono登場。この人、コスプレ大好き。両側にスモークがたかれBonoとEdgeが両岸で掛け合う。


「Mysterious Ways」では、やっぱり女を上げます。Mary J. Blige程じゃないにしてもちょい太めです。この人、女を上げて抱きしめるのも大好き(ミスキャスト多し)。「Original Of The Species」は、iTunes Music Storeにあるのと同じ(途中のトリミングがちょい違うだけ)。この流れの中で見ると、またしみじみ意義深い。


Edgeのアコースティックギターがいい。New Yorkでは「The First Time」「Stuck In A Moment You Can't Get Out Of」「Fast Cars」「With or Without You」をやる夜もあって感激の嵐。


ラストが「'40'」という、その昔のコンサートで必ずエンディングだった曲なのがまた泣かせる。EdgeとAdamが入れ替わる。
"How long to sing this song..."
観客が歌う中、Bonoが手持ちのスポットライトで会場を照らし、十字架のネックレスをマイクに掛けステージを降りる。
Adamがギターを置いてステージを降りる。
Edgeがベースのストラップを外してステージを降りる。
ひと呼吸あって、Larryがドラムロールをやってスティックを置く。


"I am, because We are." ああ、こういう感覚が味わえる瞬間、本気で生きてて良かったなと思えるよ。また、一晩の希望をもらいました。